事業の趣旨・目的等について

ⅰ)事業の趣旨・目的

 高校生の「学習意欲を喚起し、能力を最大限に伸長すること」、動物系専門学校の「高まる需要・社会ニーズに対応するために専門性を高めること」そして、地域課題である「高校への進学率向上」や「高校中退防止」、さらに業界課題である専門学校卒業後の「動物業界への定着率向上」等多様な課題を解決するためのプログラムを開発する。開発プログラムは「高校生」「専門学校生」はもちろん、高校と専門学校の前後に位置する「中学生」及び「専門学校卒業後の社会人」も包括する。

 時系列に見ると、中学と高校の橋渡しとして「高校の魅力発信プログラム」を開発。開発プログラムにより中学生にとっても魅力的な高校となり、高校進学率の向上、高校中退防止に繋げる。次に、高校と専門学校の5年間で学ぶ「高・専一貫プログラム」を開発。共通目標と一貫したカリキュラムを構築し、動物系分野の高まる需要や社会ニーズに対応できる専門人材を育成する。そして、専門学校卒業後も学び続けられる体制づくりとして「動物業界定着プログラム」を開発。離職を減らし、動物業界への定着率を向上する。卒業生が業界で活躍し、地域の中核人材となることは地域経済活性化の先導となる。また、高・専一貫プログラムで学ぶ高校生と専門学校生にとって卒業生は身近な将来像であり、将来像の明確化は共通の目標設定や一貫したカリキュラム構築の重要な要素となる。

 開発プログラムにより「動物にかかわりながら、専門性を身につけ、人や社会への貢献を認識しつつ、収入が安定し、一生続けられる仕事として動物業界で活躍できる」という好循環を本プログラム通して実現していく。そして、我が国の労働生産性及び生涯を通じた学習機会の拡大に寄与する。

ⅱ)学習ターゲット、目指すべき人材像

学習ターゲット:高校生、専門学校生
 動物にかかわりながら、専門性を身につけ、人や社会への貢献を認識しつつ、収入が安定し、一生続けられる仕事として動物業界で活躍できる人材を育成

当該教育プログラムが必要な背景について

1)高校の現状と課題

◆全国の高校生の現状と課題

 文部科学省「新時代に対応した高等学校教育の在り方(令和2年7月17日 )」より高校生の学習意欲に目を向けると、全体的な傾向として、学校生活への満足度や学習意欲は中学校段階に比べて低下している。高校においては、初等中等教育段階最後の教育機関として、生徒一人一人の特性に応じた多様な可能性を伸ばすとともに、高等教育機関や実社会との接続機能を果たすことが求められていることから、高校における教育活動を、高校生を中心に据えることを改めて確認し、その学習意欲を喚起し、能力を最大限に伸長するためのものへと転換することが急務である、としている。

◆沖縄県の高校生の現状と課題

 内閣府「沖縄の子供達を取り巻く現状」より、沖縄県の高校進学率は97.3%で全国順位は低いほうから1位、高校中退率は2.2%で全国順位は高いほうから1位、沖縄県の大学等進学率は39.6%で全国順位は低いほうから1位となっている。なお、沖縄県の子どもの相対的貧困率は29.9%で、全国平均の約2.2倍にのぼり、1人当たり県民所得は全国最下位、母子世帯の割合は2.6%と全国で最も高い。

 一方、沖縄県の専修学校進学に目を向けると、沖縄県の専修学校進学率は24.1%で全国順位は高いほうから2位となっている。 

 令和3年春卒業の沖縄県立高校生の進学率は令和2年12月末時点で65.1%となっており、前年同時期(62.0%)を上回った。 就職希望者が減り、専門学校等への進学希望者が増えたためである。沖縄県の金城教育長によると令和2年6月と12月の進路希望調査の比較では、就職希望の生徒が減少し、専門学校等への希望者が例年と比べ増加が顕著で、国の高等教育の就学支援制度やコロナ禍の影響があるのではないかと考えている、と述べた。 (「沖縄タイムス」令和3年2月27日記事より)

◆高専連携プログラム開発の必要性

 沖縄県は従来より専修学校への進学率が高いうえに、専修学校への進学希望者が増えている今、高校生の学習意欲を喚起し、能力を最大限に伸長する高専連携プログラムを「高校」「専門学校」「企業」「行政」が有機的に連携し、プログラム開発することは、沖縄県の高校進学率の向上、高校中退防止のために必要不可欠である。とりわけ、本事業で我々「専門学校」が「高校」と「企業」をつなぐ仲介者としての役割を担うことで、高校生に学びの目的意欲を持たせ、将来像の明確化を促し、地域の中核人材へと成長することを後押ししていく。そして、開発プログラムにより沖縄県の子どもの貧困率低下、そして県民所得増加という地域課題解決に寄与したい。

◆業界定着率の向上

 我々は高専連携プログラムで学び、卒業した学生の当該分野での業界定着率を最重要プロセス目標値とする。そのため開発プログラムは企業・業界が就職した卒業生を引き続き育成支援できる体系にしていく。卒業生が業界で活躍し、地域の中核人材となることは地域経済活性化の先導となる。また、高校生、専門学校生にとって卒業生は身近な将来像でもあり、将来像の明確化は共通の目標設定や高専で一貫したカリキュラム構築の重要な要素となる。

2)動物系分野の現状と課題

◆動物系分野への高まる需要やニーズ

 コロナ禍が長引く中、自宅での生活に癒しを求め、家族の一員としてペットを飼う人が増えている。一般社団法人「ペットフード協会」によると、2020年に新たに飼われた犬と猫は、どちらも前年より6万匹以上増加、犬の新規飼育者飼育頭数は46万2千頭(前年比114%増)、猫の新規飼育者飼育頭数は48万3千頭(前年比116%増)となっている。また、近年では人と動物の関係が人に与える影響の重要性が認識され、動物を介在した介護や福祉、疾病治療や機能回復、教育に関する諸活動も行われるようになり、単なる愛玩動物としての飼養に留まらず、社会的意義も増している。

 飼い主による健康管理やしつけの重要性、獣医療内容の高度化や多様化を背景に、「愛玩動物看護師」国家資格が誕生し、令和5年12月末までに第1回国家試験が実施されることとなっている。動物系専門学校では高まる需要や求められるニーズに対応すべく、さらなる教育内容を充実させているところである。

◆動物系業界の現状と課題

 一般社団法人日本動物看護職協会は今後の動物看護師のあり方や課題を検討するため、「動物看護師の勤務実態に関するアンケート調査」を2020年7月に実施した。調査結果によると、年収が「200万円未満」と回答した人が327人(26.3%)と最も多く、ついで「200~240万円未満」が285人(23.0%)であり、約半数が年収240万未満で週40時間以上の勤務をしている状況であった。給与に対して、半数以上の676人(54.4%)が「不満」「非常に不満」と感じている結果となり、「満足」「ある程度満足」と回答した565人(45.5%)を上回っている。

 また、就業規則の有無の問いに対して、「無い」の回答が 220 人(17.7%)、退職金についての問いでは「わからない」の回答が 441 人(35.5%)、労災保険の加入も「わからない」が 287 人(23.1%)であった。低賃金に対する不満や就業の不安定さはあるものの、「今後も動物看護師として働きたいと思う」と回答した人は971人(78.8%)と多く、仕事へのやりがいについても「非常に感じる」「ある程度感じる」の回答が1073人(86.5%)となった。

◆動物系分野における高専連携プログラム開発の必要性

 当学園の動物系専門学校の卒業生も仕事へのやりがいを感じつつも、低賃金に対する不満や就業の不安定さから業界を離れ、動物業界とは違った業種職種へ転職する者がいる。動物系分野への高まる需要と社会ニーズ、そして、地域の中核人材育成のために動物業界・企業も積極的に参入いただき、高専連携プログラムを開発する必要がある。

 高校生及び専門学校生が「動物に関われること」はもちろん、「専門性」を身につけ、「人や社会への貢献」を認識し、「収入が安定し、長く続けられる動物関連の仕事」に就けるという好循環を本プログラム通じて実現していく。そして、我が国の労働生産性向上及び生涯を通じた学習機会の拡大に寄与する。


開発する教育プログラムの概要

ⅰ)名称

沖縄・動物系分野における有機的高専連携プログラム

ⅱ)内容

◆高校、専門学校の前後に位置する「中学」「卒業後」を含めた総合プログラムを開発

 高校生の「学習意欲の喚起」や専門学校生の「高まる需要・社会ニーズへの対応」「専門性を高めること」と同時に、「高校進学率の向上」や「高校中退防止」、卒業後の「業界定着率の向上」と幅広い課題解決のために、本事業で開発するプログラムは高校、専門学校の前後である「中学」「卒業後」を包括した総合プログラムとする。

◆課題解決方法

◆開発するプログラム全体図

◆高専連携接続の課題と解決方法

 高・専一貫プログラムを高校から受講している者と受講していない者で学習時期にズレが生じるが、資格取得対策の通信化、段階的に人材育成できるフィールドワークプログラムの開発により、受講・未受講での接続課題を解決、学習者全員を地域の中核人材へと育成していく。